【BL漫画紹介】『嫌いでいさせて』1~2巻(*ネタばれ注意)
こんにちは、鳥です。
前回紹介した『テンカウント』はどうでしたでしょうか?親しみやすい内容になっていれば良いのですが…………日々精進ですね。
さて今回は今まさに重版に重版を重ねている話題の新作をご紹介しようかと思います。
『嫌いでいさせて』(1~2巻)作:ひじき *詳細は文末
1.設定
αの高校生(土屋葉月) × Ωのシングルマザー(古賀雫人)
2.オメガバースとは
この『嫌いでいさせて』は所謂、オメガバース作品です。オメガバースに関して知識のない人もいると思いますのでここで少し補足しておきましょう。
オメガバースとは海外発祥の特殊設定で、平たく言えば男女の他にα、β、Ωの三つの性別が存在している世界であり、もっとあけすけに言えば男でも妊娠できる世界ということです。大変偉大かつ意味不明な設定であり、BL界隈では好んで読む人も多いジャンルです。
オメガバースの特徴を簡単に説明しますと、
(1)男Ωが獣よろしく発情しフェロモンをぶちまけます
(2)そのフェロモンに充てられた男αが男Ωに襲い掛かります
(3)〈あは~ん♥〉します(→この時に男Ωの首筋を男αが噛むシーンがしばしばありますが、それは番(つがい)となるための必須儀式です)
(4)男Ωが妊娠します(→Ωは妊娠機能があるため、普段は発情の抑制剤やピルを服用して自衛することが求められます)
ざっくりこんな感じの認識をもって頂ければいいのではないかと思います。
3.あらすじ
【1巻】
「俺は男のアルファが嫌いなんだ!!」*1巻1話より抜粋
Ωのシングルマザーとして一人娘の雫と暮らす雫人は、ある日無理やり参加させられた婚活パーティで「運命の番」だというαの青年と出会う。過去のトラウマからその場を逃げ出した雫人だったが、後日用務員として採用された学校で、制服姿の例の青年、葉月と再会してしまう。初めはαである葉月の存在を拒絶していた雫人だったが、次第に彼の真摯な想いに心を開いていく。
【2巻】
「俺はオメガでよかった。オメガだからこそ今が幸せなんだ」*2巻5話より抜粋
無事番となり、第2子・湊を授かった雫人と葉月。番という関係に順風満帆な生活を送っていた二人だったが、雫人の過去のトラウマの元凶となったαとの再会がその穏やかな生活に影を落とす___
4.分析と見どころ
(1)子持ちBLというコンテンツ
まず一つ言わせてほしい。子持ちBLッ!◆※♪〇Δ§ΗΘΣッ!?
この天使が、雫人の第一子である雫ちゃん。そしてこの天使を天使と呼ぶのは決してネタというわけではありません。彼女は親である雫人がΩだと周りから馬鹿にされても彼をママと呼び続け、その小さい身体で偏見から雫人を守る姿勢を取り続けます。(健気の具現化ですね)
さらに上の画像は1巻で雫人が葉月から距離を獲ろうとしたとき、素直になれない雫人の代わりに二人の間を再び取り持とうと、泣きながら葉月にお願いをする雫ちゃんです。
彼女は正にこの作品のLOVE♥エンジェルであり、キーパンソンであり、ヴィーナスなわけです。そして子持ちBLにというワードに群がる私のような輩をこの作品に導いたのもまた彼女。
この愛のキューピットに財布の紐が緩むのも自然の心理でしょう。
(2)本能に抗う姿
オメガバースで重要となるのはΩの発情期ですが、発情期のΩのフェロモンに抗えるαはいません。それを踏まえた上でご覧ください、このシーンを。
抗っているだとッ!!?!?
葉月は目の前で雫人のヒート状態になったにもかかわらず、自分の腕を噛み血を流しながら堪え、あろうことか他のαやβに雫人が襲われることがないよう必死に抱きかかえ守っているのです。そう、愛ゆえに。これは正しく愛が本能を超えた瞬間……
世の中の「心と体は別もん」などとほざき散らかしている浮気野郎はこれを教本にした方がいいでしょう。きっと泣きながら改心できます。
そしてこのシーンの魅力はもう一つあります。私のような歪みまくった性癖をもった変態はただ一般の純愛を描かれただけでは、うがった見方をしてしまいがちですが、こと流血シーンに関しては異常なまでの反応を見せます。
推しが涙を流せば興奮で頬を赤らめ、推しがボロボロの血まみれになれば鼻血を吹き出す。それが我々変態です。
ですからそんな変態たちさえも満足させるひじき先生の心意気がこのシーン(流血)には見られるわけです。感謝しかありません。
(3)萌えの連鎖反応
『嫌いでいさせて』はとにかく読者の頬をだらしなくさせる作品です。我々の界隈ではよく「BL漫画は少女漫画」だと称されることがありますが、この作品は正にそのいい例です。
カッコ良さの中に可愛さを垣間見せる攻めと終始可愛い受け。加えて若干数のクソ野郎は登場しますが、その輩が引き立て役になることで二人の愛が輝くので全く問題はありません。
勿論、濃厚なあは~ん♥もございます。
そしてやはりここでもエンジェルの存在。2巻の表紙を見て頂ければお分かり頂けるのではないかと思います。
分かりますかね、この尊さ。そしてこれは単行本ならではの感動ですが、実は1巻の帯には「αなんていらない」と書かれているにもかかわらず、2巻の帯には「Ωだからこそ幸せ」と表記されています。この時点で我々はこの物語の純愛を悟ります。そして表紙に目を向けると
「天使が一人増えているだと……?」
このことを確認した瞬間、それは本を手に取りレジに向かうタイミングです。
天使とは愛の証。
ジュテェェェェっむッ!!!!
(4)サブキャラの魅力
京介……お前ッ……
京介は葉月の親友ポジションで登場する青年なのですが、まず一つ誤解のないように言っておきますと、決して雫人と葉月と京介の三角関係があるわけではありません。京介は常に葉月の傍にいて、時には彼の無茶をフォローし、時には声をかけ支えてくれる気遣いと優しさのお化けです。『嫌いでいさせて』はサブキャラにとにかく優しい人たち多い作品ですが、是非京介を、是非京介を見てやってください。(2巻では名前だけの登場にとどまり悲しみにくれました……)
5.こんな方におススメ
1.年下攻め、年上受けが好き
2.子持ちBLが好き
3.優しい世界が好き
4.純愛が好き
5.絵が綺麗な作品が好き
展開としてはやや典型的とも言えますが、多分に萌えを含んでいる作品です。雫人のトラウマを描くシーンはシリアスに描かれていますので純愛だけじゃつまらんという方でも楽しめると思います。(物足りなさを感じる変態さんも多いでしょうがw)
因みに私は尊さに呼吸方法を見失い、何度か本を閉じながらやっとのことで完読いたしました。
6.作品詳細
タイトル:嫌いでいさせて(1~2巻)
作者:ひじき
出版社:株式会社リブレ(ビーボーイオメガバースコミック)
特設サイト:https://b-boy.jp/special/kiraide-isasete/…
【BL漫画紹介】『テンカウント』全1~6巻 (*ネタばれ注意)
こんにちは、鳥です。
今回は初の【BL漫画紹介】の投稿です。そんな記念すべき初投稿はどの作品にしようかと少し悩んでいましたが、やはり私のバイブルであるこの作品にしました。
『テンカウント』(全1~6巻)作:宝井理人 *詳細は文末
1.設定
無愛想なカウンセラー(黒瀬陸) X 潔癖症の社長秘書(城谷忠臣)
2.あらすじ
【1巻】
「〈10〉にたどり着く頃にあなたは必ず完治します」*1話より抜粋
ひょんなことから個人的に潔癖症のカウンセリングを受けることになった城谷。年下臨床心理士黒瀬の強引な誘いで始まった「患者と医者」とも、「友達」とも言えない奇妙な関係に、初めは戸惑いを隠せない城谷だったが、次第に黒瀬に心を寄せていく。
【2巻】
「拒絶したいのか、汚されたいのか、どっちですか?」*11話より抜粋
黒瀬から突然のカウンセリング終了を告げられ塞ぎ込んでいた城谷に、再び黒瀬からの呼び出しのメールが届く。複雑な感情のまま黒瀬に会いに行くと、城谷はそこで黒瀬の胸の内を知る。恋愛と依存の狭間で二人の関係が動きだす____
【3巻】
「もし、俺も黒瀬くんのことが好きだって言ったら____どうなるんですか?」
*14話より抜粋
スーツの弁償を兼ねて二人で出かけた先で、城谷は不意に黒瀬とのキスを想像してしまう。体験したわけでもないそのキスに体を反応させてしまった城谷は、再び黒瀬の自宅へ。自分の裏腹な心と体に翻弄され戸惑いながらも、黒瀬の手を拒めないのは何故か___
【4巻】
「気持ち悪い……っ」*20話より抜粋
自分を好きになった理由は「潔癖症だったから」そう黒瀬に告げられ、ショックから黒瀬の元を飛び出した城谷。しかし拒絶した心に反して疼く体を止められない。その歪んだ快楽に城谷の過去のトラウマが呼び起こされる。
【5巻】
「死ぬほど嫌なことなら、きっと死ぬほど気持ちいいですよ」*26-27話より
自分が実は人一倍汚されたいという被虐心を持っていることを黒瀬に言い当てられ、二人は遂に体をつなげる。黒瀬との行為を終え、どこか吹っ切れた様に手帳に10個目の項目を記入した城谷。一方で黒瀬は過去の過ちを繰り返してしまったことに後悔の顔を見せる。
【6巻】
「俺はきっと黒瀬くんのことが好きなんです」*37-40話より抜粋
初めての城谷からの誘いで出かけることになった二人だったが、その道すがら城谷が潔癖症になった原因となる女性と偶然再会してしまう。それぞれがトラウマを乗り越え迎えながら築かれた愛のカタチとは____
3.分析と見どころ
(1)圧倒的な画力と表現力
まずは、とにかく絵が綺麗で細かい。その繊細さは最早異常です。例えば2話のなんでもないこの1コマ。
なんですか、この自転車。正直自転車なんてハンドルと車輪がついていれば十分でしょうが、このフレームやらハンドルに掛かったジャケットから伝わる意地でも譲らんとばかりのこだわり。初手からすでに執念を感じます。
そしてそんな道具や背景一つ一つの丁寧さもさることながら、宝井さんは登場人物たちの心情表現や間、その場の空間を演出をするのが非常に上手いです。
それはセリフのないコマの使い方が絶妙だからです。
ただ水を飲むだけのシーンに3コマ……しかしそれがいい。実際に黒瀬くんがペットボトルの水を飲むのにかけて時間はものの数秒でしょう。しかし「回し飲み」の項目に挑戦している潔癖症の城谷からすれば、この場面は固唾をのみながら、並々ならぬ緊張を強いられているわけです。ですからこの3コマは城谷の目線から描き出した城谷の心情そのものであり読者を引き込む重要な一手なわけです。
さて、これでとりあえず宝井さんが天才だというのが周知の事実になりましたね。
(2)こだわり抜かれた単行本の表紙
これに気づいたとき私は思わずため息を漏らしました。そう、ここは最早心づかいが行き過ぎた高級料亭なのだと気づいた瞬間でした。単行本を手に取っていても、実際に気付いている方は少ないのではないかと思いますが、実は『テンカウント』の単行本の裏表紙にはどの巻にもペンキで書かれたような数字が書かれています。
この数字は、城谷が1話で自分の手帳に書いた暴露反応妨害法の10の項目うち、その巻で城谷がクリアないしは体験したものの項目なのです。商業BLの裏表紙は、良く登場人物たちの立ち絵やちびキャラなどがプリントされていることが多いですが、宝井さんのこの工夫は一味違う。
迷いなく私を三ツ星レストランへ誘ってくれました。ウマシカテ。
(3)今までにない設定
さて1、2では主に絵について語ってみましたが、外せないのがやはり設定でしょう。潔癖症?臨床心理士??ちょっと待って、おばさん財布開けるから。
そもそも攻め受けの絡みを主軸に置くBLというコンテンツにおいて相思相愛の潔癖症というのは物理的に困難を極めます。現に『テンカウント』でも1巻ではそういう絡みは全くありません。
しかし考えてもみてください。「さあ!喰ってくれ!!」と言わんばかりのエロ薔薇も勿論美味しく頂けますが、パブロフの犬ばりにお預けをくらった後に食べるBLのおいしさと言ったらッ!!つまりはそう言うことです。
また潔癖症とは心的要因が大きい病気ですから、逆にその症状が相手を受け入れているか否かというバロメーターにもなるわけです。
この設定を考えた宝井さんはやはり神でしょう。
4.こんな方におススメ
- 綺麗な絵が好き
- 年下攻め、年上受けが好き
- 妄想的なものより現実的な設定が好き
- 無愛想な黒髪男子、少し頼りない年上が好き
典型的な恋愛ものというよりは、どこか小説を読んでいるような繊細な感覚を与えてくれる作品です。ですからハチャメチャなラブコメの方が好き!という方には少し向かないかとは思います。もちろん決して読者に損をさせない作品ですので、興味があれば是非手に取ってみてください。
5.作品詳細
タイトル:テンカウント(全1~6巻)
著者:宝井理人
公式Twitter:http://twitter.com/10count_info
公式HP:http://shinshokan.com/10count/
TVアニメ予告動画
まずはこのブログの紹介です。
初めまして。
「鳥かよ。」です。気軽に鳥(チキン)とでも呼んでいただければと思います。
ブログを始めた理由は実は特にはないのですが、強いて言えばTwitterの文字数制限に対抗するためといったところです。
作品(主にBL漫画)への思いのたけを叫ぼうとした際に、如何せんこいつが邪魔で仕方がない。かと言って興味のない話題でフォロワー方のTLを無闇に荒らすのも忍びない。と、そこで目を付けたのがブログでした。
そんなわけでこの鳥ブログでは私の独断と偏見を駆使し、時には激しく、時には面白く、時にはシリアスに【BL漫画紹介】をしていけたらなと思っています。
何分初めての試みですので色々と不慣れではありますが、平和な、しかしじっとりねっとり熱(作品愛です)のこもった記事を書いていけたらなと思っています。
さて、私自身の自己紹介はまたおいおいということで、怪しいかとは思いますが、中身はただの鳥ですので遠慮せず絡んでいただければと思います。それでは今回はこの辺で。最後に自宅の漫画コレクションの一部をチラ見せしてお別れです。
(これだけで「超アナログ単行本派ばばあ(TATB)」だというのがバレますねw)